<大相撲名古屋場所>◇12日目◇24日◇IGアリーナ
ウクライナの新星が、鉄人の壁も破った。東前頭筆頭の安青錦(21=安治川)が、関取最年長40歳の玉鷲に勝ち、10勝目を挙げた。新入幕から3場所連続の2桁勝利は、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降で阿武咲、大の里に続いて3人目の快挙。すでに来場所の新三役を確実にしているが、初優勝も見えてきた。
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相手の強烈な突きに顔を背けないのは、いつものこと。安青錦は前傾姿勢を崩さず、左を差す。間髪入れずに下手投げ。「感覚です」という動きで、玉鷲を仕留めた。「中に入ったら自分の形だったんで、しっかり落ち着いて勝てて良かったです」。右目に青あざが残る顔を緩めることなく、息を整えながら言った。
初顔合わせでも、圧力にひるまなかった。「40歳でやれるのは普通じゃない。すべて持っている力を出していこうかな」と自分の年齢の倍近い相手を尊重しつつ、勝ちきった。2桁勝利については「師匠のおかげです」と感謝した。
日に日に優勝を争う力士が絞られてくる終盤戦。緊張感が高まる中、「いつも通り、あまり意識しない。目の前の相手だけいつも意識してやっています」と話した。
その一方で、師匠の安治川親方(元関脇安美錦)は、弟子の緊張を感じ取っていた。この日の午前3、4時ごろ。宿舎のトイレの前でばったり会った。
「また(相撲のことを)考えているのか?」と師匠が声をかけると「たまたま目が覚めただけです」と答えたという。安治川親方は心中をおもんぱかる。「緊張しているみたい。緊張は準備の1つ。しっかり相撲を考えていることだから」。