陸上自衛隊輸送機オスプレイの佐賀駐屯地(佐賀市)への配備開始を9日に控え、飛行ルートに当たる有明海のコハダ(コノシロ)漁師たちが騒音による漁への悪影響を懸念している。有明海は、江戸前ずしのネタとして重宝されるコハダの全国有数の漁場。音に敏感な魚だけに、漁業者たちは「有明海から姿を消すのでは」と不安を募らせる。

 「波が船にぶつかる小さな音でも魚が散ってしまう。携帯電話の着信音にも気をつけている」。佐賀県太良町の寺田豊さん(55)は、28年前から続けるコハダ漁の難しさを語った。

 夜明けとともに竹崎港を出港。船から双眼鏡で海面を見つめ、魚群がいたらエンジンを止める。「逃げないでくれ」。息をひそめ、静かに櫓(ろ)をこいで近づく。直径約10メートルの網を一気に投げ込み、引き上げる。

 5〜10月ごろ水面近くを泳ぐ習性があるコハダ群。わずかな音でも水中に潜るため、伝統的な投網漁は「音との闘い」でもある。それだけに、2014年に防衛省が佐賀県にオスプレイ配備を要請したときは「もっての外だ」と怒りが込み上げた。

 事前調査を求める地元の声を受け、同省九州防衛局は17年と19年に大型ヘリを佐賀空港沖などに飛行させて影響を調べた。19年の調査では45回中44回で魚群が潜り、一定の時間後に浮かんできた。防衛局は「大型ヘリの音に対する反応」としつつも、「具体的には運用開始後の実態を踏まえて確認する必要がある」として漁への影響評価には踏み込まなかった。「国にはぐらかされた」。寺田さんは防衛省の対応に不満を募らせる。