高井幸大(20歳)のトッテナムへの電撃移籍は、日本サッカーのレベルが上がったことだけを示しているのではない。それ以上に、日本人が知らない大きな可能性を秘めている。「スパーズ」の愛称で知られるユニフォームに高井が袖を通した事実は、今後の日本サッカーのレベルアップをさらにうながすことができる。大きな希望を抱かせてくれる移籍なのだ。
“J→直接プレミア”は戸田和幸以来22年半ぶり
一体どういうことか。本題に触れる前に、まずは日本サッカーのレベルが上がった点について説明しよう。
高井はJリーグからプレミアリーグのクラブへ直接移籍を決めた。これは3人目の快挙だ(三笘薫や板倉滉はプレミア勢加入と同時に、他国リーグへとレンタル移籍されたので含まず)。過去は2001年の稲本潤一(アーセナル)と2003年1月の戸田和幸(トッテナム)の2ケースだけ。今回の移籍はおよそ22年半ぶりの快挙となった。
今回の移籍は高井の能力に加えて、192cmという恵まれた体格もプラスに評価されたはずだ。日本と比べてヨーロッパ諸国の平均身長は高いケースがほとんどではあるが、190cm以上あれば、それだけで評価は上がる。
ただ、今回のケースは高井本人の努力に加えて――日本サッカー界が積み上げた成果でもあった。
1つが、クラブレベルでの強化だ。川崎フロンターレのACLでの奮闘は、ヨーロッパの目利きが約10億円の投資(高井の移籍金は500万ポンドと報道されている)を安心して行なえる要因を増やした。クリスティアーノ・ロナウドを筆頭に、かつてヨーロッパで活躍してきた選手たちと対峙したときに、高井がどれくらいのプレーができるのかを把握できたからだ。