北中米ワールドカップまで1年を切った。時間があるようでいて、日本代表がやるべきことは山積している。最終予選を突破した準備、そして本大会に向けた準備について、山本昌邦ナショナルチームダイレクターに聞いた。〈NumberWebインタビュー全3回の1回目/つづきを読む〉
アジア最終予選を史上最速で突破したのは、偶然ではない——。
過去2回の予選はいずれもホームで迎えた初戦でつまずいた。ロシア大会の予選ではUAEに1−2、カタール大会はオマーンに0−1で惜敗。北中米ワールドカップを目指す過程では、その原因の究明と対策が必要だった。
初戦を乗り切るための緻密な「準備」
「過去2大会の最終予選はスタートがうまく切れず、苦しい展開になりました。要するに9月シリーズ(2試合)の難しさに直面した。相手は早めに乗り込んできてキャンプを張り、時差調整もしていた。試合までの準備期間に大きな差がありました。一方で、われわれは海外でプレーする選手が中心になっていてシーズンがスタートした直後のタイミング。所属チームにおけるポジション争いのストレスだったり、そもそもシーズンのスタート時期にもばらつきがあった。その結果、コンディションの上がり方にも違いがあり、さまざまな面で準備の難しさがありました。
そのうえで問題だったのが、日曜日まで所属クラブで試合があるケースでした。代表の連戦のうち最初の試合は木曜日に開催されることが多いわけですが、火曜日に到着してその日はリカバリーが必要な選手もいて、実質、チーム全体で練習できるのは試合前日の水曜日だけだった。これを何とかできないかというのが、われわれの出発点でした」
2023年2月に現職に就いた山本昌邦ナショナルチームダイレクターは、フィリップ・トルシエ監督時代にコーチを務め、アテネ・オリンピックでは監督としてチームを率いた。予選はもちろん、国際大会を戦った経験を豊富に持つ。その中で成功と失敗を繰り返し、痛感したことがあるという。それは細部にわたる「準備」の重要性だ。
「前日は公式練習なので時間が限られるし、負荷を上げることもできない。そうすると、メンバーのコンディションも十分に把握できないまま試合を迎えることになります。何とか火曜日の練習までに全員がそろう状況をつくれないか、全体練習の数をもう1回増やせないかと考えました。そうすれば、チームで戦術を合わせる機会も、全体ミーティングの数も増やすことができる。試合の2日前なら、例えばゲーム形式でちょっと負荷をかけたメニューも可能でしょう。選手のコンディションに関するデータはその都度、取っていましたが、そういう練習をしないと分からないこともあります。練習の回数を増やすことがチームにとって大きなプラスを生むのは明らかでした」