広島で行われている陸上競技のインターハイ。その男子100mで10秒00という驚異の記録がマークされた。桐生祥秀(日本生命)が京都・洛南高3年時にマークした高校記録を12年ぶりに更新し、U18世界新記録にもなる快記録だった。しかもその記録を出したのは、まだ16歳の高校2年生。果たしてその新星とは何者なのか。《NumberWebレポート全2回の1回目/つづきを読む》

 10秒00――。

 タイムレースとなったインターハイ男子100m決勝第3組で、その衝撃のタイムが速報で掲示されると、スタンドが大きくどよめいた。

 続いて、風速が公認記録として認定される「+1.7(追い風1.7メートル)」と表示され、再び歓声が上がる。そして、記録が「10秒00」で正式に確定すると、3度目のどよめきが沸き上がった。

 この衝撃のタイムを叩き出したのは、高校2年生の清水空跳(そらと)(石川・星稜高)。当の清水もまた、フィニッシュタイムを確認すると、飛び跳ねて喜びを爆発させた。

「10秒00は自分でも衝撃。最終組で追い込まれている状況がタイムにつながって、伝説を作ったかなという気がします」

 そう、清水がマークした10秒00は高校新記録。桐生祥秀(日本生命)が京都・洛南高3年時の2013年4月に打ち立てた記録を、実に12年ぶりに塗り替えた。さらには日本歴代5位タイにランクインした。

同年代のウサイン・ボルトも超える快記録

 それだけではない。清水は2009年2月生まれの16歳。U20、U18の日本新記録だったばかりか、U18の世界最高記録(従来は10秒06)をも打ち立てた。つまりは少年時代のウサイン・ボルトさえも、踏み入れることのできなかった領域に到達したということだ(もっともジュニア時代のボルトは、200m、400mを中心としたロングスプリンターだったが)。

 まさに、記録ずくめの快挙だった。

 清水は陸上一家に育ち、自然な流れで小4から陸上を始めた。

 父・正雄さんは走高跳の選手で、国体入賞の実績がある。母・絵美さんは100mハードル、姉・優奈さんは400mハードルで、それぞれ活躍した。

 ちなみに“空跳”という名前は走高跳に由来し、「自分の足で空に向かって跳ぶ」という意味があるという。

「父からは、走高跳や走幅跳をやってほしかったと言われていました」

 だが、当の清水はジャンパーではなく、スプリンターとして才能が花開く。

 中学時代は200mで全国制覇。高校生になると、昨年7月にサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が持っていた高1最高を塗り替え10秒26まで記録を伸ばし、インターハイでは1年生ながら2位に入った。1年生の2位は、実に42年ぶりの快挙だった。

 今年の日本選手権では決勝進出には100分の1秒届かなかったものの、予選で桐生の持っていた高2最高に並ぶ10秒19をマークしていた。

 そして3週間後、インターハイでさらなる衝撃の走りを見せることになる。