「胃下垂(いかすい)の人は、どれだけ食べても太りにくい」と聞いたことがある人はきっと多いことでしょう。「胃下垂の人がうらやましい!」と感じる人もいると思いますが、一方で「本当に太りにくいの?」と疑う声もあるほか、「胃下垂は病気じゃないの?」「自分が胃下垂かどうかを知る方法はある?」といった疑問を持つ人もいるようです。

 実際のところ、「胃下垂の人は太りにくい」というのは本当なのでしょうか。「まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック」(京都市伏見区)院長で、消化器病専門医の船越真木子さんに、その真偽について教えていただきました。

むしろ「太りにくい体質の人」が胃下垂になりやすい?

Q.そもそも「胃下垂」とは何ですか。

船越さん「胃下垂とは、胃が通常よりも下の位置にある状態のことをいいます。医学的には『胃下垂症』や『胃下垂病』とも呼ばれています。

胃下垂の主な症状としては、食後から長時間続く満腹感▽消化不良▽便秘▽下痢▽疲れやすい―などといった症状が挙げられます。ただ、多くの胃下垂の人は無症状で問題なく日常生活を過ごしており、症状がない限りは治療の対象にならないといわれています。

胃下垂の原因としては、遺伝的に胃が下がりやすい体質▽極端なダイエットによって体重が急激に減少したこと▽腹筋が弱くなって胃が下がること―などがあると考えられています。

鉄欠乏やタンパク質の摂取不足で、内臓を支えるコラーゲンの生成が不十分な人は、胃下垂だけでなく、内臓全体が下垂していることが多いです。高齢になると子宮脱や直腸脱につながります。他にも、長時間の立ち仕事や座り仕事、過度なストレスなども影響する場合があります」