[シントラ(ポルトガル) 3日 ロイター] - ポルトガルのシントラで今週開かれた欧州中央銀行(ECB)主催の年次金融会議「ECBフォーラム」は、トランプ米大統領による米連邦準備理事会(FRB)への攻撃や、法定通貨を裏付けにしたステーブルコインの台頭により、中銀が金融システムを司る能力が脅かされている状況が議論の中心となった。

近年のECBフォーラムはインフレ懸念が中心的なテーマになってきた。

しかし今年は、中銀総裁によるパネルディスカッションからホテルのバーでの深夜の議論に至るあらゆる場面で、これまで当然と考えられていた通貨制度そのものに対する、より本質的な脅威が中心的な話題となった。中でも最も顕著な例は、トランプ氏によるパウエルFRB議長への度重なる攻撃だ。

UBSアセット・マネジメントが今週発表した調査によると、各国中銀の外貨準備運用担当者のうち3人に2人が、FRBの独立性が脅かされていると回答した。

パウエル議長はパネル討論会でこうした懸念を一蹴。自身を含めFRB幹部は「政治から完全に距離を置き」、インフレ抑制と完全雇用の達成に「100%集中している」と言い切った。この発言に対しては会場に集まった経済学者や中銀関係者から拍手が送られ、ECBのラガルド総裁は「もしパウエル氏の立場なら、私たちも同じようにするだろう」と賛意を示した。

<揺らぐ信認>

しかし既に信認は揺らいでいる。中銀総裁らは、ほんの数カ月前まではタブー視されていた話題、すなわち「FRBは来年、トランプ氏が指名する次期議長の下でも、困難な状況に陥った外国銀行にドルを貸し続けるのか」という問題について公然と懸念を表明した。