Takahiko Wada Makiko Yamazaki

[東京 24日 ロイター] - 原材料価格や人件費、物流費などの高騰を背景に積極化してきた企業の値上げ戦略が正念場を迎えている。賃上げの継続もあって消費者が値上げを支えてきたが、足元では大幅な値上げで販売数量が大きく落ち込むケースも出てきた。米国の関税政策を巡り、企業収益への影響がはっきりとは見通せない中、日銀の利上げの根拠の1つとなってきた企業の積極的な賃金・価格設定行動が続くのか、今が「分岐点」との声が専門家から出ている。

<消費者の意識に変化>

ここに来て、企業の値上げに対する姿勢は一段と積極的になっている。帝国データバンクによれば、7月の飲食料品の値上げは合計2105品目で前年比5倍となった。年間2万品目の値上げが視野に入っているという。

物価研究の第一人者として知られる渡辺努東京大学名誉教授は、為替が円高に振れ、輸入物価の上昇圧力が後退する中でも値上げが続いていることについて「消費財メーカーがかなりプライシングに自信を付けている」とみる。企業のこうした変化を支えているのは消費者の意識の変化だと話す。

渡辺東大名誉教授は、ロシアのウクライナ侵攻で商品市況が高騰した2022年に消費者の値上げに対する意識が変化したと指摘。その後、賃上げが続いたことが値上げへの耐性を支えたとする。

値上げをすることが悪、という考え方が弱くなっている――。氷菓「ガリガリ君」を販売する赤城乳業の岡本秀幸マーケティングチームリーダーは値上げに対する消費者の意識が変化したと話す。かつては値上げに多くの理由が必要だったが「今は、値上げするのは必要なことだというのが世の中的に認められているような雰囲気を感じる」という。