2023年3月31日付22面
■2023年3月31日の記事
杵島郡白石町は「田舎暮らし」が体験できる修学旅行を誘致する取り組みを始める。交流人口を増やすと同時に、県外の子どもたちに農業や自然豊かな白石を知ってもらうことでさまざまなつながりを期待する。来年秋からの実施を目指し、100人程度の受け入れ態勢をつくるために協力家庭の募集を始めている。
今年5月、大阪市の中学校から48人が修学旅行で白石町を訪れた。町内17世帯に1泊2日で“民泊”。農業体験や食事作りで「田舎暮らし」を学び、楽しんだ。白石町初の修学旅行誘致が実現した。
担当した町商工観光課は「中学生も受け入れ家庭もおおむね喜んでもらえたようで良かった。継続については運営や法的な課題などもあり、これから検討していきたい」と手応えを感じている。
旅行の日程は、初日は昼過ぎの「入村式」の後、2〜4人が一組になって17の受け入れ世帯に向かった。それぞれの家は体験学習を用意して出迎え、タマネギやジャガイモの収穫、郷土料理の須古寿司(ずし)やイチゴジャム作りなどを2日間にわたって実施した。生徒は料理も手伝い、2日目の昼過ぎの「退村式」の後、次の旅先の長崎へ向かった。
生徒たちは「土に触れたり、カエルがいたり。全て新鮮だった」「ずっと白石に住みたいと思った」と“白石暮らし”を満喫した感想を寄せた。受け入れ家庭も「礼儀正しく素直だった」「バーベキューや花火も喜んでくれた」と親睦を深めた様子。「体験学習は天候に左右されない内容も考えておく必要がある」と課題も指摘した。
商工観光課は町観光推進協議会と連携して3年前から準備を進めた。受け入れ家庭を募るチラシを全戸配布し、決定家庭には食中毒対応やハラスメントを含めたリスクマネジメント研修を受けてもらった。家庭用火災警報器の設置確認など、保健所や警察、消防との連携も重ねた。中学生の個人情報やプライバシーへの配慮も欠かせず、町民への周知は抑えて、写真撮影にも留意した。
このほか、受け入れ家庭が旅館業の許可を取らずに済むように「修学旅行向け体験型民泊」という制度を利用。食事を共同で作り、体験学習の経費として費用を支払って、食事や宿泊の報酬を発生させないことで法的問題もクリアした。
多様な対応を重ねた商工観光課は「民泊事業として継続するには受け入れ家庭の維持や研修実施、旅館業法対応なども欠かせず、組織と人員が必要になる」と継続への課題を挙げる。(小野靖久)