石破茂政権の肝いりだった「防災庁」設置が、参院選の与党大半を受けて先行きへの不透明感が漂ってきた。令和8年度中の設置を目指し、来年通常国会への法案提出を予定するが、今後の政権構想によっては軌道修正を求められる可能性もある。ただ、各党は防災政策の強化でおおむね一致しており、政府関係者は「どんな政権でも前には進む」と楽観的だ。
防災庁設置を巡っては8年度当初予算案に人員拡充を盛り込むため、政府は8月末の概算要求へ準備を進めている。合わせて内閣府にある防災部門を内閣直轄へ移行すべく年末に向けて設置法案を検討している。
石破首相は防災対応の司令塔機能を強化する防災庁設置を掲げて昨年10月に就任。担当相に最側近の赤沢亮正経済再生担当相を充て、優先課題として推進してきた。
一方、参院選で各党は防災政策に重点を置き、野党側には「防災省の設置」(社民党)などと与党よりも態勢強化を訴える向きもあった。
こうした議論には東日本大震災の被災地支援に特化した復興庁を防災庁へ統合する選択肢も含まれる。しかし全国知事会などの要望で政府・与党内で既に検討され、被災地に配慮して先送りされた経緯があり、与野党で方向性に大差がない。
そのため、防災庁を巡る議論は自民が政権に留まれば「軌道修正で済み」(内閣府幹部)、政権交代しても「白紙化して再構築すれば済む」(同)との見方がある。
防災政策強化は過去の政権で検討されつつ、見送られてきた。ある政府関係者は「それだけ遅れてきた政策分野ということだろう」と指摘した。(市岡豊大)