参院選で自民党など憲法改正に前向きな「改憲勢力」が、非改選を合わせて国会発議に必要な定数の3分の2を維持した。自民が議席を大幅に減らした分を参政党や国民民主党の躍進がカバーした。もっとも参院では選挙前も3分の2を確保していたものの、改憲論議は進まなかった。参院憲法審査会の議論が活発化するか否かは、憲法改正を党是に掲げる自民の奮起にかかっている。

参院の3分の2のラインは166議席だ。今回の参院選で自民、公明両党に加え、日本維新の会や国民民主、参政、日本保守党などのいわゆる「改憲勢力」は合わせて180議席を獲得した。

特に、一から憲法を作り直す「創憲」を掲げる参政が議席を大幅に増やした。

「国民の多くが参政党の憲法作りに期待を寄せていることのあらわれだ。国民からアイデアを集めて国家観を作り上げていく活動を進めていきたい」

今回の参院選の初当選組の一人で、参政の改憲案作りに携わった安達悠司氏は22日の記者会見で、強い意欲を口にした。

とはいえ、参院で憲法改正の動きが加速すると考えるのは早計との声もある。先の通常国会で改憲勢力が3分の2を確保していたにもかかわらず、参院憲法審の開催はわずか6回にとどまったからだ。

衆院側が戦争や大規模災害など選挙困難時に国会議員の任期延長を可能にするための改憲を目指したのに対し、憲法54条の「参院の緊急集会」の役割を重く見る参院側が議論の進展を警戒したとの見方もある。

ただ、憲法改正は参院先議でも進められる中、参院自民が他の改憲項目の議論を主導した形跡もない。自民幹部は「参院は衆院から送られてくる法案を確実に成立させる重責を担う。このため改憲に後ろ向きな立憲民主党を過度に刺激しないように努める傾向がある」と語る。

しかし、参院選では保守層の支持が参政や国民民主に流れた。関係者は「改憲への消極的姿勢も信頼を失った遠因だろう。自分で自分の首を絞めた」と述べ、奮起が必要だと指摘した。(内藤慎二)