トランプ米大統領が20日に就任から半年となるのを受け、外務省の森健良元事務次官が産経新聞の取材に応じた。森氏はこの半年間で「トランプ氏の考え方がゆっくりでも変わってきたことは大いに注目に値する」と指摘し、1月からの半年間を振り返った。概要は以下の通り。
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トランプ米大統領は、かつて共和党のレーガン元大統領が掲げた「力による平和」を外交方針としているが、レーガン時代とは中身が全く違う。
レーガン氏は自由主義、民主主義に基づく秩序を守るには力が必要で、そのために同盟国と連携し、問題があれば自ら解決に向かう姿勢を示した。一方でトランプ氏は、普遍的価値に基づく国際秩序の維持に大きな関心を示さず、ナショナリズムや米国第一主義を掲げている。
米国が国際秩序を守るために力を使わなければ、結局は米国のためにならない。その意味で、ロシアによるウクライナ侵略への米国の対応が試金石になると考え、米政権の動きを観察してきた。ドイツのメルツ首相らが直接、トランプ氏にウクライナ支援の重要性について説いていく中で、トランプ氏の考え方がゆっくりでも変わってきたことは大いに注目に値する。
また、トランプ氏は孤立主義的傾向が強い「MAGA(米国を再び偉大に)」陣営のイデオローグたちの反対にも関わらずイラン攻撃を決断したが、同陣営の大勢から不支持の声は特に上がっていないという。トランプ氏個人への支持は強力だ。トランプ氏と真正面から世界について語ることにより米国民の考えに影響を与える可能性を示すものかもしれない。
一方、米政権として中国こそが問題だと捉えていることは間違いないが、トランプ氏個人の肉声はほとんど聞いたことがない。トランプ氏自身がインド太平洋に関心を持って動いている気配は現時点であまり感じられない。
内政問題で一番支持率が高いのは国境管理対策の強化だ。社会の許容限度を超えて移民を受け入れてきたのは米国だけでなく欧州も同様だが、移民排斥に向けた声が急速に大きくなっているのが実態だろう。
(聞き手 岡田美月)