中国の裁判所がアステラス製薬の日本人男性社員に実刑判決を言い渡したことを受け、外務省は中国を対象とした「海外安全情報」のうち滞在中や渡航予定の日本人に注意喚起する「スポット情報」を出した。一方で「危険情報」は「レベルゼロ」を維持している。同省は「現時点では引き上げを検討しているわけではないが、常に検討はしている」としている。
スポット情報は22日付で、「中国の『反スパイ法』に関連する注意喚起」との題名。反スパイ法を制定している中国では、国家秘密に該当する情報を得たり、データなどを保有したりしただけでスパイ行為とみなされ、厳罰に処される恐れがあると呼びかけている。
一方、危険情報は日本人の渡航・滞在について特に注意が必要な国・地域について4段階で色分けして公表。中国については昨年6月の蘇州での日本人母子切りつけ事件や9月の深圳での日本人男児刺殺事件後も、新疆ウイグル、チベット両自治区のレベル1「十分注意」を除き「レベルゼロ」のままとなっている。
米国は昨年11月、中国本土の危険レベルを4段階のうちレベル3の「渡航の再考」からレベル2の「警戒を強化」へ引き下げた。米国務省はホームページで「レベル1と2は1年ごと、3と4は少なくとも半年ごとに定期的に見直している」と説明している。
外務省海外邦人安全課の担当者は取材に対し「危険レベルは中長期的な観点から総合的に判断しており、現時点では引き上げを検討しているわけではないが、常に検討はしている」。
一方で「各国を見ていると、色分けしている国は世界の中では少数だ。色分けされた危険レベルはわかりやすい反面、グラデーションがつけづらいため、誤解も生じやすい」と説明。
「スポット情報や領事メール、現地説明会などきめ細かい情報提供により、色と色の間を埋める努力をしている」と話した。