セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(13)


E−1選手権で得点王とMVPをダブル受賞したジャーメイン良 photo by Fujita Masato

 国内組だけで構成されたサッカー日本代表が、E−1選手権の最終第3戦で開催国の韓国と対戦し、1−0で勝利。3戦全勝で2大会連続3度目の優勝を果たした。森保一監督は「新戦力の発掘」と「代表チーム全体の底上げ」をテーマに掲げ、大会3試合で招集メンバー26人全員を起用したが、どのような収穫があったのか? ご意見番のセルジオ越後氏に聞いた。

 【ジャーメインはもっと早く代表で試すべきだった】

 どんな大会であれ、優勝は優勝。それもライバルの韓国にもしっかり勝ったわけだから、そこはまず評価したい。

 このE−1選手権は、FIFA(国際サッカー連盟)が定める国際Aマッチデー期間の開催ではないため、日本代表が海外組を招集できず、Jリーグでプレーする選手のみで構成。追加招集も含めると、14人がA代表初招集という新鮮な顔ぶれだった。

 公式戦である以上、目標はもちろん優勝。ただ、それ以上に、森保一監督も言っていたように「新戦力の発掘」「チーム全体の底上げ」ができるかどうかが注目だった。香港、中国、そして韓国と徐々に相手のレベルが上がっていくなかで、誰がどんなアピールをして、今後、レベルの高い海外組に割って入ることができるか。

 結論から言えば、結果は出したものの、内容的にはかなり厳しかったね。香港戦(○6−1)は、前半で大量リードを奪うところまではよかったけど、後半にメンバーが替わってからは明らかにリズムが悪くなり、セットプレーから失点した。中国戦(○2−0)も試合を通して、すごく困るという場面はなかったけど、かといって相手を圧倒するまでには至らなかった。

 そして韓国戦(○1−0)は引き分けでも優勝できる状況で、早々に先制点を奪い、無理をする必要はなかったとはいえ、相手に押し込まれる時間帯が長く、チャンスも多くつくられた。最後はアップアップだったね。正直、よく逃げ切ったと思う。選手個々のパフォーマンスを見ても、アピールできた選手は少なかった。

 そんななかでも名前を挙げるなら、まずFWジャーメイン良(サンフレッチェ広島)だね。30歳での代表デビューながら3試合5得点で、大会得点王とMVPを獲得。9月のアメリカ遠征(メキシコ戦、アメリカ戦)に呼ばれて当然の結果を出した。

 香港戦での4得点について「相手のレベルが低いから」という人もいるけど、試合開始から26分で4ゴールはなかなかできることではないよ。しかもシュート4本で4ゴールだからね。確率100%だ。1点目は胸トラップからのダイレクトボレー。2点目のヘディングシュートは完全に相手GKの逆を取った。

 3点目も連携からのダイレクトで決め、4点目もワンタッチでしょ。いずれもシュートのクオリティは高かった。そして大一番の韓国戦で、ボレーでの決勝点。あれも難しいシュートだった。

 ジャーメインは昨季、ジュビロ磐田で19点取っている。広島に移籍した今季はここまで4得点と数字は物足りないけど、試合を見れば、チームの攻撃の軸として存在感を発揮している。正直、もっと早く代表で試すべき選手だったね。

 E−1ではワントップの下のシャドーでプレーして、運動量があって、ボールは収まるし、フィジカルも強い。相手DFを背負ってのプレーもできて、最終的にペナルティエリア内に入れば、(182㎝の)サイズがあるから迫力もある。

 日本代表のシャドーのポジションには、鎌田大地(クリスタル・パレス)、久保建英(レアル・ソシエダ)、南野拓実(モナコ)ら実績と経験のあるライバルが多いけど、最前線に張り付くのではなく、プレーエリアの自由度を高くしたワントップに起用することで共存可能だと思う。日本代表には絶対的なFWがいないだけに、面白い存在になるんじゃないかな。いずれにしても、一度、海外組とプレーさせてみて、どこまでできるかを見てみたい選手だ。