愛知県一宮市の住宅街に佇む「マルシンバンバン」は、86歳と83歳の夫婦が二人三脚で営む大衆食堂です。名物のラーメンや餃子、ボリューム満点のオムライスを目当てに、今日も常連客が訪れます。半世紀以上、変わらない温かさと味わいが多くの人を惹きつけています。

■懐かしさ漂う…86歳と83歳のおしどり夫婦が営む街のぬくもり食堂

 愛知県一宮市の住宅街にある街の一軒の食堂「マルシンバンバン」。暖簾をくぐると、いつもにぎやかな声が響きます。その目当ては…。

女性客: 「イチオシはやっぱりラーメン」 別の女性客: 「餃子おいしい」 男性客: 「オムライス。デカいよ」

ボリューム満点の「オムライス」(800円)、大きな羽根の付いた「餃子」(420円)。そして、昔ながらのカツ丼(800円)など、どれもお値打ちでボリューム満点です。

お店を切り盛りするのは、伴泰國さん(86)と、妻・信子さん(83)。二人合わせて169歳。あたたかく迎えてくれる夫婦が作る料理は、半世紀にわたって常連客に愛され続けています。 女性客: 「優しいし、おいしいし」 男性客: 「いつも優しくしてくれる。(お店は)いっぱい飲んでほしいと思うけど、『飲みすぎじゃない』と心配してくれる」 別の女性客: 「ちょっと来ないと心配してくれる」

つい足が向いてしまう、そんな懐かしさ漂う大衆食堂です。

■リクエストに応じるうちにメニューは50種類以上…一番人気は昔ながらの中華そば

 午後4時45分。開店の1時間ほど前に二人が店に到着すると、早くも一組目の客がやってきました。 常連客: 「(オープンは)本当は6時。5時だから早いけど」

いつも混み合う前に来店するというこの常連客は、決まって「餃子」を注文します。 信子さん: 「(Q羽根は付けない?)この人は羽根ダメだもん。お客さんに合わせる」 客の細かなリクエストにも応えてきました。 開店時間の6時。暖簾を出したのは常連客。早くも忙しい夫婦に代わって、お手伝いをします。

「レバニラ」(700円)に、「ねぎま」(3本450円)、「ソバめし」(950円)と、自慢のメニューは50種類以上。客のリクエストに応じるうちに、どんどん増えていったといいます。

泰國さん: 「メニューが多すぎる。和洋中あるので、お母が怒っている。減らせって」 信子さん: 「多すぎる。やめてって言っても、言うことを聞いてくれない」

50種類あるメニューの中で、特に人気なのは「ラーメン」 男性客: 「ダシが手作りなので、本当においしい」 看板メニューは、昔ながらの「ラーメン」(580円)です。

秘伝のラーメンのダシは、まずトビウオの子ども「アゴ」を炒めて香ばしさを引き出し、そこへ豚骨、鶏ガラ、キャベツなどを入れて煮込みます。 そしてチャーシューは、豚バラを白醤油ベースの特製ダレで約2時間煮込んで仕上げます。この味の虜になる常連客も少なくありません。チャーシューの旨みが出た「醤油ダレ」にも秘密が…。 泰國さん: 「これがラーメンのもとになるしょうゆ」 チャーシューの旨みが染み出た「醤油ダレ」に、先ほど仕込んだ少し甘めの「あごだし」を合わせます。麺は昔ながらの中太ちぢれ麺。自慢のチャーシューを3枚のせて完成。

あっさりとした味わいの中に、深いコクが広がる。半世紀以上、地元で愛されてきた一品です。 男性客: 「昔ながらの中華そばだから子供たちも好き」

■夫婦円満の秘訣は“ほどよいケンカ”…夫婦二人三脚で紡ぐ地域に愛される味

 店主の泰國さんは、中学卒業後に繊維業を経て飲食業の世界へ。信子さんと結婚し、二人三脚で店を切り盛りしてきました。

信子さん: 「ずっと働いているよ、結婚してから。子ども3人産んだけど病院から帰ってきて横になった覚えがない。寝とれん」 泰國さん: 「(Q 奥さんのどこが好き?)みんな好きや。奥さんがいるからやれる。一緒じゃないとできない」 午後7時。夜になると、厨房はさらに忙しくなります。すると、客がビールを運んでいます。

泰國さん: 「動けないからお客さんがやってくれる。ありがたい」 ビールをついだりグラスを片づけたり、常連客が率先して手伝います。こんな風に支えてくれる人たちがいるからこそ、長く続けてこられたのでしょう。

泰國さん: 「お客さんからの手紙。小学3年生が書いて、わざわざ持ってきてくれた。うれしいよね」

多くのファンに愛される大衆食堂。いつも一緒の二人に夫婦円満の秘訣を聞きました。 泰國さん: 「ケンカ。本当のケンカをしちゃいかんよ。本気で怒ることもあるけど、そこから一歩は出さない。こらえなかったらもう終わり」 夫婦円満の秘訣は「ほどよいケンカ」。最後に今後の目標を尋ねました。 泰國さん: 「死ぬまでやっとる、現役で。やれるうちはやる」 信子さん: 「(泰國さんが)一人でやるんじゃない」 泰國さん: 「1人じゃできん。手伝ってもらうからね。この人がいるからやれる。お願いします」 信子さん: 「よろしく」

支え合う二人が生み出す味と温もりは、これからも多くの常連客を惹きつけていくでしょう。 2025年6月9日放送