青森県八戸市小中野地区に25日、新しい夏祭り「小中野祭り」が生まれた。100年以上の伝統を誇る夜店が昨年途絶えたため、地域の「おやじ」たちが立ち上がり、約2カ月の短い準備期間で開催にこぎ着けた。祭りは初日から多くの市民でごった返し、大きな一歩を踏み出した。26日まで。

 25日夕。新丁通り約300メートルが歩行者天国となり、露店やキッチンカー約30店が並んだ。八戸三社大祭の下組町山車(だし)組によるおはやしや、小中野に伝わる左比代虎舞も披露された。

 階上町赤保内小の浜飯悠さん(12)は父親が小中野出身で、幼少期からこの地域の夜店に来ていたという。「久しぶりだけど人がすごかった。みたらし団子がおいしかった」と笑顔を見せた。

 同地区には100年以上続いた「新丁夜店」があった。新丁夜店は大正時代、旧小中野町の商店街の売り出しとして始まったとされる。同市江陽の魚市場とも近く、新丁には多くの商店が軒を連ねており、夜店も夏の風物詩として多くの人々に親しまれていた。

 しかし時代とともに店舗数は減少。主催する新丁商店会の会員数も減り始めた。夜店は2023年の第106回が最後となった。

 子どもたちのため、祭りを絶やしたくない−。立ち上がったのは、地域の小中学校のPTAやOBなどで構成する「小中野おやじの会」(藤森一英代表)だった。会員ら約30人が仕事の隙間時間を生かしたり、休日を返上したりして奔走。夜店の実行委員会や商店会などの助けも借りた。

 実際開催してみたら想像以上のにぎわいだった。おやじの会が運営する屋台では、開始約1時間で用意していた食べ物がなくなり、翌日の分まで提供していた。

 実行委員長の長谷川皓之さん(42)は「(祭りが)久しぶりということもあり、多くの人が来てくれた。明日はもっと混むと思うので、最後まで大きなトラブルなく終えたい」と笑顔で汗を拭った。

 新たな地域の祭りのスタイルを模索中という。「たくさん改善点が見つかると思うので、土台づくりの第1回としたい」。早くも来年に向け意気込みを見せた。