サッカーJ3・SC相模原が海老名市内に新スタジアムを整備する計画を発表したことについて、相模原市内では波紋が広がっている。7月2日に行われた本村賢太郎市長の定例記者会見では、市内外のメディアから市の対応やシティプロモーションへの影響を指摘する声が相次いだ。「相模原にプロチームを」という市民の声によって誕生したクラブの本拠地移転をめぐり、今後の動向が注視されている。

SC相模原は2021年シーズンに、リーグの基準を満たすスタジアム整備の具体的な計画を提出することを条件にJ2ライセンスを取得した。クラブが現在ホームスタジアムとしている相模原ギオンスタジアム(南区下溝)の入場可能数は6259人で、J2の試合を開催可能な基準(入場可能数1万人以上)を満たしていない。

相模原駅北口で整備かなわず

クラブはこれまで、JR相模原駅北口の相模総合補給廠一部返還地を活用した多機能複合型スタジアムの整備をめざしていた。21年には相模原市をホームタウンとする他の3つのスポーツチームと共に約10万4千筆の署名と要望書を本村賢太郎市長に提出。昨年11月には他チームと連名で同地区の土地利用計画に関する民間意見募集に提案書を提出した。

しかし今年5月に相模原市が発表した同地区土地利用計画骨子にはスタジアム整備が含まれなかった。市は、民間募集で提出されたスタジアム建設に関する4件の提案は、いずれも市が条件としていた「民設民営」の条件を満たしていなかったとしている。

リーグへの計画提出期限が6月末に迫る中、クラブはホームタウンである相模原市、海老名市、座間市、綾瀬市、愛川町の中で新たな候補地を模索。海老名市内に整備計画として提出できる場所が見つかったため、同市への打診を経て6月30日、計画提出に至ったという。

J1基準のスタジアム

提出された計画は、J1基準の1万5000人を収容可能な多目的スタジアムを整備するというもの。具体的な場所は明かされていないが、クラブの担当者は「条件を満たすスタジアムを整備することが大前提だが、クラブの経営理念『地元の未来に必要なものをつくる』のもと、人が集まりシビックプライドの根源になるような場所を作りたいという意思はある」と話している。

SC相模原の西谷義久社長は「海老名市は近年高い人口増加を示しており、首都圏において最も注目される街の一つ。この計画の推進を通じて、海老名市のスポーツ・文化の発展やシティブランドの向上に貢献していきたい」とコメント。

海老名市の内野優市長は「ホームタウンでもある本市の発展性などを高く評価した上で、数ある都市の中から選定いただいたことに感謝。市民の理解を得ながら気運の醸成を図り、官民連携手法によりそれぞれの役割分担のもと、本市としてもできることは協力していく」としている。

本村市長「残念」

相模原市の本村賢太郎市長は7月2日の定例記者会見で、「創設時から密接に関わってきた中で市外での計画が出されたことは率直に残念に思う」と切り出したが、「海老名へ移転しても、市は今後もクラブを支え応援し続ける」と考えを示した。これまで市がクラブに寄り添い様々な対応を行ってきたとしつつも、「もっと寄り添って、半年前とか1年前から私たちからも話をするべきだったのかもしれない」と反省も口にした。その上で、市は複数の代替地を提示していたこと、既存スタジアムの改修も選択肢として提示していたことを明かし、「クラブが駅に近い立地を最優先とし、これらの提案に関心を示さなかったと認識している」と話した。本村市長に本拠地移転が伝えられたのは、30日の午後5時9分だという。

ライセンス可否9月に

クラブの担当者によると、今後スタジアム整備を共同で進めていく事業者や事業スキーム、具体的な構想はまだ決まっていないという。相模原市の他のホームタウンチームとの連携については「今後一緒に何かを進めていく可能性は考えられると思うが、今の段階では決まっていない」とし、「相模原」を冠するクラブ名の変更についても「まだその検討の段階にない」としている。

リーグによる審査を経て、J2ライセンス交付の可否は9月に発表される見込み。交付された場合、リーグから計画の実現に向けた具体的な条件などが提示され、それを踏まえて共同で実施する事業者や資金調達、スキームなどの準備を年単位で進めていくことになるという。

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SC相模原は元サッカー日本代表の望月重良さんが2008年に神奈川県社会人リーグ3部のクラブとして創設した。14年にJリーグに参入し、23年に(株)ディー・エヌ・エーの連結子会社となった。