「花より団子」じゃないんだよな〜

 長距離列車「WEST EXPRESS 銀河(ウエストエクスプレス ぎんが)」や、2025年のブルーリボン賞に輝いた特急「やくも」の273系などを手がけてきた川西さんは、地域共生のフラッグシップ(旗艦)列車を目指した「はなあかり」が「地域の皆さんが参加したくなるモチベーションを持ってもらえるのは何だろうかと考えた」と振り返ります。着目したのは「花」でした。

「お花を集めて、お花畑のような車両を走らせたらお客様が集まってくださると思い、『花』をテーマにすることに提案した」と打ち明けます。運行時には「沿線の保育園、幼稚園の子どもたちが近くに咲いているシロツメクサといった野花を摘み、乗客一人一人に渡すような人々の温かさが伝わるような列車になってほしい」との願いを込め、車内の壁際に花を飾る一輪挿しをしつらえました。

 車体色もこの「花」のコンセプトが貫かれています。奈良時代から伝わる檳榔子染(びんろうじぞめ)色をまとった車体にも、テーマとなる花や草のイラストを金色で施しました。

 川西さんが明かした興味深い開発秘話の中でも、筆者が特に関心を抱いたのは「幻のフリードリンクバー構想」でした。筆者のような「花より団子」の乗り鉄は、もしも実現していれば、乗車したいという意欲がぐんと高まっていた気がします。しかしながら、「花」をテーマにした「はなあかり」という名称の列車であることに鑑みると、沿線の工芸品やアート作品を愛でる「貸し切り美術館」の方がコンセプトに合致しているのかもしれません。