人生において複数の居場所を持つことの大切さについて、育児漫画家の高野優さんが自身が図書館に通っていた経験を交えながら語りました。心が疲れた時に自分らしくいられる場所があると、子供も大人も支えられます。

左)北村花絵アナウンサー 右)高野優さん

テレビ静岡で2025年7月27日に放送されたテレビ寺子屋では、育児漫画家の高野優さんが「『3つの居場所』で自分らしく」というテーマで講演をしました。

転校生だった私を救ってくれた図書館

皆さんには居心地のいい場所、リラックスできる場所、自分らしくいられる場所はありますか?

ちょっと気持ちが疲れてしまった時に、自分自身の心を守れる「居場所」があることはとても大切だと思います。

私は小学生の頃に転校が多く、行く先々でなじもうと努力はしましたが、どこかぎこちなさが抜けませんでした。家に帰っても親とうまくコミュニケーションがとれず、学校でも家でも気持ちがすり減ることが多かったんです。

そんな時はどうしていたかというと、一人で図書館へ通っていました。いつでも気軽に行けて、司書の方が「よく来たね」と言って本を勧めてくれたり、図書館が主催のワークショップで工作を教えてもらったりしました。家と学校以外に「居場所」があったおかげで、子供の頃の自分はとても救われました。

そんな経験から、人は「複数の居場所」を持つことが大切だと感じています。例えば居場所がひとつだった場合、そこで人間関係がギクシャクしたら逃げ場がなくなってしまいますよね。お互いがそれぞれ「複数の居場所」を持っていたら、ちょうどいい距離感で心地よいお付き合いができると思います。

息が詰まることは誰にでもあるので、そんな時は「違う居場所」で思いっきり深呼吸をする。これは大人にとっても子供にとっても、とても大切なことだと思います。

どんな「居場所」がありますか

それでは具体的に、どんな居場所があるのか。

子供だったら家・学校・部活・塾や習い事・友人宅・祖父母宅など。

また、場所ではありませんが、「本」もある意味「居場所」なのかなと思います。なぜなら、ページを開くだけでいろんな知らない世界へ連れて行ってくれるからです。私は本を通して「自分の居場所は学校や家だけじゃない。世界はきっともっと広いんだ」と知っていたから、夢をいっぱい持って大人になれたんだと思います。

次に大人の場合はどうかというと、家・職場・カフェ・本屋さん・習い事。お子さんが小さかったら支援センター・児童館もいいですね。海・山・公園など、どこだって居場所になると思います。

こういった「居場所」は、大きく3つに分けることができます。

1つめは、主に生活をする場である「家」。

2つめは、自宅以外で長い時間を過ごす「学校や職場」など。

そして3つめは趣味や息抜きといったリラックスできる場所で、この3つめの居場所を持つことは人生のさまざまな面でメリットがあるとされています。

子供の“居場所探し” 導いて

3つめの居場所では、肩書きや役割、責任感から解放される時間を持つことができます。役割を離れて過ごす場所があるからこそ、役割を求められた場所で力を発揮できるのではないでしょうか。

私は子供支援の仕事に携わって、今の子供たちがいかに窮屈で、いかにしんどい毎日を送っているか痛感しています。たった一度の人生だから、できることならば全ての子供に自分らしく笑って過ごしてもらいたい。

そのためには、まず大人の私たちが楽しみ、笑っている姿を見せることが大切です。

そしてもしも、お子さんが居場所をなかなか作れないようでしたら、安心安全な居場所を作れるように大人が導いてあげてください。

高野優:育児漫画家・イラストレーターであり、三姉妹の母。2015年に、ベストマザー賞文芸部門受賞。漫画を描きながら話をする独特なスタイルで子育てに関する講演を行っている。

※この記事は2025年7月27日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。