2025年6月26日付のフィナンシャル・タイムズ紙は、トランプ大統領はイスラエルのイラン攻撃を止めたが、これは脆弱な停戦であり、トランプは、衝突が中東の不安定化の原因とならない様にするべきだという社説を掲載している。

(Kevin Dietsch /gettyimages・Office of the Iranian Supreme Leader/AP/アフロ・dvids)

 トランプ大統領は、ロシアのウクライナ侵攻を終わらすことも、イスラエルがガザの休戦協定を破るのを止める事も出来なかったが、イスラエルのイラン攻撃を終わらせた。衝突が国境を越えて広まるリスクと国際的なエネルギー供給を混乱させることを阻止したトランプの努力は歓迎された。

 同大統領はまずネタニヤフ・イスラエル首相のイラン攻撃を黙認し、やがて積極的に参加したが、イランの核施設への米軍による空爆に対するイランの反撃は、トランプに勝利宣言を許し、停戦へと進ませた。しかし、これは脆弱な停戦だ。

 イスラエルとイランの敵対関係はこの12日間の衝突でより深まってしまっている。イランは火力で圧倒され、イスラエルのインテリジェンスに酷く浸透されて著しい損害を受けた。多くの軍の高官が殺害され、防空網も破壊された。

 そして、核施設が空爆を受け、数百人の一般市民が亡くなった。他方、イランもイスラエルに対して弾道ミサイル攻撃を続け、28人を殺害し、甚大な損害を与えた。

 ネタニヤフ首相は作戦目標を達成したと宣言したが、イランの拡大しつつある核開発計画の破壊という彼の第1目的は恐らく部分的にしか達成されていない。米国の報告によれば、トランプがバンカー・バスターを軍に使うように命じたにもかかわらず、イランの核開発計画は数カ月遅れるだけだろうとしている。しかも、400キロの兵器級に近い濃縮ウランの行方は不明だ。

 問題はイスラエルの攻撃はイランが核開発計画をより秘匿させ、イランの指導者達に自国の抑止力を回復させるために核兵器の必要性を確信させるという事であり、イランの国会は 国際原子力機関(IAEA)との協力を中断することを決議した。もう一つの問題は、イスラエルが自信過剰となり、一方的に攻撃を再開するリスクだ。

 いずれにせよトランプ大統領次第だ。そもそも、今回の危機の端緒は、第1期トランプ政権時の 2015年に米国がイラン核合意から脱退したことであり、イランは、米国の脱退後1年たってから、徐々にウランの濃縮度を引き上げた。

 トランプ大統領は、中東に平和をもたらすと約束したが、彼はネタニヤフ首相に好き勝手にガザを破壊させ、イラン攻撃を支持した。もし、トランプがこの停戦が続く事を望むのならば、イスラエルとイランの両方に圧力を掛けなければならない。