グラフィックデザインサービスの「Canva(キャンバ)」は23日、グローバルにおけるAI戦略と日本市場での展開について発表した。AIを活用した統合的な機能群の「Magic Studio」や日本語対応テンプレートなどが紹介された。
Canvaは13年前にオーストラリア・シドニーで創業し、月間アクティブユーザーは2億4,000万人。日本でも累計5億件以上のデザインが作成され、急成長市場として位置づけているという。共同創業者でCPOのキャメロン・アダムス氏、日本法人のカントリーマネージャー高橋敦志氏らが登壇した。
AIを網羅的に利用できる「Magic Studio」
Canvaは、AI機能を統合した「Magic Studio」を展開している。プロンプトを入力するだけでデザインを自動生成できる「Magic Design」、Googleの生成AI(Veo3)と連携した動画生成機能「Magic Video」、表計算データの解析を支援する「Magic Insights(マジック分析)」や「Magic Formulas(マジック数式)」など、複数のAI機能をひとつのワークフローに統合した。
デザインの目的やテーマを入力すると、レイアウトやテキスト、写真素材などを自動構成したデザインが生成される。作成されたコンテンツはすべてCanva上で編集可能で、配色の変更やテキストの差し替えなども自由に行なえる。AIの複雑な操作や専門知識を必要とせず、非デザイナーでも直感的に操作できる点が特徴とされる。
さらに、AnthropicのAI「Claude」との連携も開始された。ClaudeからCanvaのデザインを直接生成・編集できる統合機能が実装されており、生成AIとデザインツールの連動が可能。
4月にリリースされた新機能「Canva Sheets」では、スプレッドシート上の変数データを使って、多言語に対応したSNS投稿メッセージなどを一括で生成できる。関数補完やグラフ提案にも対応し、直感的に扱えるのが特長。
よりプロフェッショナル向けには、2024年に買収したデザインソフト「Affinity」との連携を進めている。高度な画像編集やDTP制作が可能なAffinityとCanvaを併用することで、プロと非デザイナーの協業を支援する。
日本に特化した「シン・地元主義」戦略
Canvaの活用は国内でも広がりをみせており、中学校や大学での教材制作や表現学習に利用されている。教育機関には無償で提供され、自治体単位での導入も進行中だという。
日本市場に向けたローカライズも強化されており、約2年かけて日本人に合わせた多様なコンテンツやテンプレートを開発。例えば、日本人モデルの写真を提供するAfro Image、円谷プロのキャラクター「カイジュウステップ」、イラストACの2万点以上の素材、漢字のフリガナ機能など、特有のニーズに応じたコンテンツを拡充している。こうした国内の文化や事情にあわせたローカライズ戦略を「シン・地元主義」と同社は呼んでいる。
企業向けでは「Canva Enterprise」の導入が進む。日本航空や日産自動車などが活用しており、部署間でのビジュアル制作を効率化し、ホワイトボード、動画、プレゼン資料などを一元的に管理できる点が評価されているという。こうした支援やコンテンツ強化により、日本市場は世界トップ10市場の1つに成長した。