高知市街地にありながら、自然と歴史が融合する「五台山」には、短くも登りごたえ抜群のヒルクライムと、多様な文化に触れることのできる名所の数々があります。そんな見どころ満載のコースを自転車で走ってきました。

高知市街にそびえる小さな山『五台山』とは

 高知市の中心部にほど近い「五台山(ごだいさん)」は、自然と歴史が調和する魅力あふれる場所です。短距離ながらも登りごたえのあるヒルクライムに加え、信仰や文化を感じられる名所が点在しています。そんな五台山を自転車で巡ってきました。

展望テラスから望む浦戸湾
展望テラスから望む浦戸湾

 高知市の南東部に位置する五台山は、標高146mの小高い山です。街の喧騒からわずかに離れた場所にありながら、自然が豊かで、歴史ある寺院、植物園などが点在し、市民に親しまれています。高知市街や浦戸湾が一望できる展望台からの眺望は必見です。

 五台山のヒルクライムは、平均勾配6%、距離は約2km、標高差およそ120mの短い登坂です。しかし、その短さとは裏腹に、木々に覆われた道は雰囲気があり、時折現れる急勾配やスイッチバックがアクセントとなる、魅力的なコースです。

 国分川にかかる青柳橋(あおやぎばし)を渡ると始まる一方通行のコースで、対向車を気にしなくて済むため、ライディングに集中できるのは嬉しいポイントです。

 道中は多少の勾配変化がありますが、特に序盤と終盤が急勾配というのが特徴です。

 登坂の終点には小さな展望テラスがあり、そこからは高知市街地と、その向こうに広がる山々が見渡せます。特に印象に残ったのは、遠くに連なる山の稜線の中で一際目をひく「工石山(くいしやま)」でした。

 トイレも整備されており、一息つくにはちょうど良い空間になっています。景色をゆっくり楽しみながら、登ってきた達成感を噛み締めるとともに、心地よい疲労感を味わいましょう。

四国霊場第三十一番札所『竹林寺』を歩く

 山頂から一方通行の道路をそのまま少し下ったところにある「竹林寺(ちくりんじ)」は、四国八十八ヶ所霊場の第三十一番札所として知られています。奈良時代に行基によって開かれたとされるこの古刹は、高知市内にありながらも山中に静かに佇むその姿が訪れる人の心を落ち着かせてくれます。

 山門をくぐると、木漏れ日が美しい参道が続いています。その背後に広がる緑と青空とのコントラストが見事で、思わず足を止めて見入ってしまいました。本堂ではお遍路さんが手を合わせている姿が見られ、この地に息づく信仰の歴史を感じることができます。

 静かな境内で、風の音や鳥のさえずりに耳を澄ませるひととき。自転車でのヒルクライムで高まった鼓動が、少しずつ落ち着いていくのがわかります。

 竹林寺の隣りには、高知が生んだ植物学者・牧野富太郎博士を記念した「高知県立牧野植物園」があります。博士の業績を紹介する展示館のほか、日本各地の植物が植栽されており、自然の中で植物と向き合う時間がゆっくりと流れています。

「高知県立牧野植物園」では、5月後半に見頃を迎えていた絶滅危惧種の「ガンゼキラン」が
「高知県立牧野植物園」では、5月後半に見頃を迎えていた絶滅危惧種の「ガンゼキラン」が

 私(筆者:才田直人)が訪れたとき、ちょうど「ガンゼキラン」が見頃を迎えていました。鮮やかな黄色の花が斜面一面に咲き誇る景観が広がり、このような絶滅危惧種の花に出会えることも、この植物園の特徴です。

 たくさんの花々や植物に囲まれながら園内の小径を歩くのは、自転車でのヒルクライムとはまた違った、静けさと癒やしといった自然の良さを感じさせてくれます。これも五台山が持つ多様な表情のひとつです。

 展示館では牧野博士の生涯や、手書きの植物図が多数展示されており、彼の飽くなき探究心に触れることができます。ひとつのことに熱中して、生涯に渡って極め続けた博士の生き方には強い感銘を受けました。

※ ※ ※

「五台山」は、短距離ながら本格的な登坂が味わえるうえ、登った先には絶景や歴史的名所、自然とのふれあいが待っています。都市部からすぐの場所にありながら、喧騒から離れたひと時を過ごすことができます。高知に来たら、小さな山に詰まった大きな魅力を体感してみてはいかがでしょうか。