伊勢市小俣中学校2年の秦まどかさんが、病気などで髪の毛を失った子どもたちに医療用ウィッグを提供する活動「ヘアドネーション」のため、約1年間伸ばした髪をカットした。知的障がいがある秦さん。家族や学校生活を支えてくれる友人たちへの感謝から「今度は自分が誰かを助けられる人になりたい」と決意した。 (清水大輔)
秦さんは24日、母真由美さん(51)と同市宮後の美容室「以彩」を訪れた。緊張の面持ちで、店長の中川武さん(46)に腰まであった髪の毛を35センチほど切ってもらった。中川さんは「きれいな髪質で、ウィッグにぴったり」と太鼓判を押した。秦さんは鏡に映ったボブカットの自分を見て「この髪形、めっちゃ大好き」とにっこり。
ヘアドネーションは小児がんや先天性の脱毛症、事故などで髪を失った子どもたちに、寄付された髪の毛で作ったウィッグを無償で提供する活動。秦さんの髪は、活動に取り組む大阪府のNPO法人に届ける。
秦さんは8年ほど前からロングヘア。これまで三つ編みや「お団子」にして、おしゃれを楽しんでいた。昨夏に市内の中学校で学習支援員として働く真由美さんからヘアドネーションの話を聞き「私もやりたい」と目を輝かせたという。寄付する髪が傷まないよう、ブラッシングなどの手入れを欠かさなかった。
秦さんは知的障がいや自閉症がありながらも、同学年の友人たちに囲まれて、学校行事や美術部の活動を楽しんでいる。夏休みの宿題の作文はヘアドネーションの経験を題材にしていて「私は、障がいがあります。今まで、たくさんの人に支えられ、助けてもらいました。今度は、私が誰かのために助けられる人でありたい」などとつづった。
秦さんは「髪が短くなったのを見て、学校のみんなはびっくりするだろうな。また伸ばして、寄付したい」と笑った。真由美さんは「娘が困っている人のため、自分ができることを見つけられたのが、親としてうれしい」と目を細めた。