Text by 中島晴矢
Text by 山口こすも
Text by 今川彩香
「弓指氏のまなざしと掌を通して、見るものが感じるものへと変容する。擬似体験と呼ぶには、熱すぎて速すぎる——」(山戸結希)
2025年にはじめて開催した『CINRA Inspiring Awards』。審査員の一人であり、『溺れるナイフ』などの作品で知られる映画監督の山戸結希が受賞作品として選んだのが、画家、弓指寛治の作品『You are Precious to me』だ。本作は国立西洋美術館初の現代美術展『ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?』(2024年)で発表された、上野公園と山谷の路上生活者に迫る絵画と言葉などで構成された展示作品だ。
母の自死をきっかけとして、「自殺」や「慰霊」をテーマに制作を続けている弓指。山戸が「他者との境界が融和し、燃え上がるような感動が率直にありました。観客を芸術の当事者へと巻き込み、この世界の当事者として解き放つような生の煌めきが」とコメントを寄せるように、弓指の作品には、観客をも「当事者」にさせる力がある。
今回は、弓指にロングインタビュー。指定された取材場所である小学校にうかがうと、なんと彼はいま「小学5年生」として生活しているという。図工室の懐かしい雰囲気のなか、弓指のキャリアを振り返りながら、『You are Precious to me』に込めた思いやプロセス、そして彼の芸術の背景について存分に語ってもらった。

弓指寛治『You are Precious to me』展示風景=国立西洋美術館『ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?』(2024年)より