土井善晴さん

 コメが値上がりし、品薄になり――「令和の米騒動」ともいわれる事態に、料理研究家・土井善晴さんは何を思うのか。

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■「不作」はあって当たり前

「お米は自然の恵みであり、年によって『不作』はあって当たり前。だから米を備蓄するのです」

 こう話すのは、料理研究家の土井善晴さん(68)。

「備蓄米は、不作や価格高騰に備えて国があらかじめ買い入れて保管しているもの。今回の天候不順による米価の高騰、不足に対応して、備蓄米の出荷が大問題だとは思いません」

 米が例年に比べて倍の価格というのはたしかに望ましいことではない。しかし、何もかもが物価高騰であり、それは米だけの問題ではない。米にフォーカスして騒ぐことと一連の対応の鈍さに「違和感を持っている」と話す。

■あなたはちゃんと食べていましたか?

「問題は、昨今の標準米の不足による価格高騰、一連の事態に対する流通対応行動の悪さです。消費者は備蓄米を味の悪い米と決めつけて『おいしいお米』を今まで通りの低価格で売ってほしいという。けれども、その『おいしいお米』を、あなたはちゃんと食べていましたか?」 

 そう、土井さんは問いかける。

「日々、外食や中食で済ませ、加工食品に依存している人も多いでしょう。ふだん食べているご飯が『おいしいか、まずいか』をちゃんと意識できている人がどれだけいるか。マスメディアは『令和の米騒動』などと言って煽りますが、ここにきて突然『おいしいお米』が食べたいというのも、おかしなもんやなあと思って、見ています」