■要約
オーバル<7727>は、1949年に創業された流量計のパイオニアで、流体計測機器メーカーの専業最大手であり、東京証券取引所(以下、東証)スタンダード市場に上場している。多岐にわたるラインナップを誇る流量計を提供するセンサ部門、流体計測に関わるシステムパッケージを提供するシステム部門、顧客の要望にきめの細かいメンテナンス対応で応えるサービス部門の3事業により、常に時代に最適な商品・サービスを提供し、顧客の最大級の満足を追求している。2032年3月期を目標に「アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニー」へと成長を遂げることを目指して、新中期経営計画「Imagination 2028」(2026年3月期〜2028年3月期)を鋭意推進中である。
1. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の連結業績は、売上高15,048百万円(前期比4.9%増)、営業利益1,422百万円(同3.6%減)、経常利益1,444百万円(同8.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,029百万円(同6.6%減)と、増収減益決算であった。売上高は前期の特殊要因であるオーストリアAnton Paar GmbH(以下、Anton Paar)からのライセンス契約の一時金の収受の発生がないことによる減収を、好調なシステム部門の大口案件の売上計上がこれを補完し、増収を確保した。一方、各段階の利益は前期の一時金という特殊要因を補完するまでには至らず減益となったが、この特殊要因を除けば増益基調で推移した。その結果、売上高及び各段階利益は、期初の業績予想を上回って着地した。事業部門別売上高では、主力のセンサ部門は、半導体関連業界向けは好調だった前期の実績には至らず、海外も中国・韓国の電池関連業界向けが一服したことなどから、同4.5%減であった。一方、システム部門は、国内で大口案件の売上計上があり、同49.5%増と全体の業績に大きく貢献した。また、サービス部門も、地道できめの細かいメンテナンス活動の継続や、他社製品のメンテナンスや校正の強化などから、同11.0%増となった。自己資本比率は64.8%に上昇し、プライム・スタンダード・グロース市場に上場する精密機器業界平均を上回る高い安全性を確保している。減益決算ながら、1株当たり年間配当金を同2.0円増の16.0円へと過去最高に増額したことで、配当性向は業界平均を上回り、株主還元にも十分に配慮している。
2. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の連結業績予想については、売上高15,500百万円(前期比3.0%増)、営業利益1,450百万円(同1.9%増)、経常利益1,530百万円(同5.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益920百万円(同10.7%減)としている。売上高については、Anton Paarとのライセンス契約に伴う一時金の収受及びシステム部門の大口受注等により、過去最高水準を見込む。また、原材料費・人件費の増加を見込むなかでも、営業利益及び経常利益は増益の見通しだ。親会社株主に帰属する当期純利益の減益予想については、法人税等の増加を見込むためだ。ただ、同社が発表する期初の業績予想は、慎重で保守的な傾向が強いことに留意する必要があり、予想を上回って着地する可能性が大きいと弊社では見ている。1株当たり年間配当金は同4.0円増の20.0円へと過去最高の引き上げを予定しており、株主への利益還元を重視する経営姿勢を弊社では評価している。
3. 中長期の成長戦略
前中期経営計画「Imagination 2025」(2023年3月期〜2025年3月期)では、売上高140億円、経常利益14.0億円、親会社株主に帰属する当期純利益8.8億円、ROE5.7%の2023年8月に上方修正した目標をすべて達成した。新中期経営計画「Imagination 2028」(2026年3月期〜2028年3月期)では、売上高170億円(2025年3月期比13.0%増)、経常利益17.5億円(同21.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益11.6億円(同12.6%増)、ROE7.2%(同0.5ポイント上昇)を目指す。その実現に向けて、成長戦略ではセンサ事業、サービス事業、システム事業の強化・拡大を図るとともに、新規事業の創出にも取り組む。また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、総還元性向70%以上(計画期間3ヶ年の平均)、DOE2.7%以上と利益変動にかかわらず安定的な配当を実施し、機動的な自己株式取得の実施も予定する。新中期経営計画は多岐にわたる意欲的な計画であり、今後の推移に期待したい。
■Key Points
・流体計測機器メーカーの専業最大手で、センサ部門、システム部門、サービス部門の3事業を展開
・2025年3月期決算は増収減益。増収はシステム部門がけん引。前期に発生したライセンス契約の一時金の影響による減収から減益となったが、この特殊要因を除けば増益基調で、過去最高となる配当を実施
・2026年3月期は過去最高水準の売上高を見込む
・新中期経営計画を発表。増収増益やROEの上昇を計画。達成に向けて3事業の強化・拡大を図り、新規事業の創出にも取り組む。さらに、総還元性向70%以上(計画期間3ヶ年の平均)、DOE2.7%以上を目標とし、自己株式取得の実施も予定するなど、積極的な株主還元策も計画
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
オーバル Research Memo(1):2025年3月期は期初予想を上回り、中期経営計画の目標を達成
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