ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されて10年以上がたったが、ここにきて保全に関する大きな動きがあった。6月27日に、EU(ヨーロッパ連合)が、ニホンウナギを含むウナギの全種類について、国際取引を規制するワシントン条約への掲載の提案をした。

2025年11月に行われる締約国会議でこの提案が採択されれば、日本のウナギ市場は大きな打撃をうけることになる。

一方で、実現は難しいとされていた“完全養殖のニホンウナギ”の商品化が現実味を帯びてきた。早ければ2025年末に養殖用のシラスウナギが市場に出る可能性があるという。

ウナギの未来はどうなるのか?ウナギの保全と持続的利用を専門に研究している海部健三さん(中央大学法学部教授)に話を聞いた。

輸入できなくなるわけではない

まず、気になるのがワシントン条約の行方だが、もしEUの提案が通って全種類のウナギが規制の対象になった場合、ウナギの輸出入は全面禁止になってしまうのだろうか?

「そのような誤解も少なくないようですが、今回検討されるのは、ウナギの仲間をワシントン条約の『附属書II』に掲載するかどうかです。『附属書I』に掲載された動植物は、商業目的の国際取引が禁止となりますが、『附属書II』に掲載されたものは持続可能かつ合法であることを示すことができれば、商業目的であっても取引は可能なのです」

とはいえ、「まだはっきりしたことは言えない」としつつも、国内市場には大きな影響が出る可能性があると予想する。

「流通量は確実に減少するでしょう。現在日本における純国産ウナギの流通量は全体の2〜3割程度です。日本で流通しているウナギの6割程度が国外で養殖されたもの、4割の国産ウナギも、その3割から5割程度は輸入されたシラスウナギから養殖されています。

つまり、国内で流通する7〜8割が国外から輸入されたウナギであり、それらは規制の対象になります。流通量が減れば当然価格は上がるでしょう。その時、もはやスーパーで買う値段じゃないと思う人も出てくるかもしれません。ただ先を予測することは非常に難しく、国内の養殖業者と契約を結んでいる大手のスーパーや生協よりも、専門店の方が不利になる可能性もあります」