【大人気連載プレイバック】#11
日刊ゲンダイではこれまで多くの球界OB、関係者による回顧録、交遊録を連載してきた。
当事者として接してきたからこそ見える、あの大物選手、有名選手の知られざる素顔や人となりが記されており、当時の空気や関係性がありありと浮かび上がってくる。本企画では、そうした一編を過去の連載の中からピックアップ。あらためて掲載する。
今回は故・伊良部秀輝について綴られた、元巨人の橋本清氏(評論家)による「僕だけが書けるスター選手の真実」(第14回=2004年)を再公開。年齢、肩書などは当時のまま。(※この項は全4回。今回はその①)
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「おい、見てみろよ。あいつ、えらいごっついボールを放ってるで」
傍らにいた立浪が声をかけてきた。立浪とは幼稚園からの同級生。一緒に野球を始め、当時から野球センスはずばぬけたものがあった。その立浪がマウンドにいる相手投手を指さし、驚きの声を上げている。視線を移すと、ひょろりと背の高い投手が目に入った。
何や、向こうのチームには外国人がおるんか。
それが、伊良部秀輝との出会いだった。今から24年前、ボクと伊良部が小学校5年生になったばかりのことだった。
中学に上がると、伊良部の名前をあちこちで聞くようになった。ボクと立浪はボーイズリーグの「茨木ナニワボーイズ」に所属。伊良部は同じリーグのライバルチーム「兵庫尼崎」のエースになった。中学生になった伊良部は身長が180センチを超え、えげつないほどの剛速球を武器に名を上げたが、地元ではその「やんちゃぶり」でも名の通った存在になっていた。