PRESIDENT Online 掲載

■住宅購入を促したロシア政府の「手のひら返し」

ロシア経済の息切れを伝える報道が相次いでいる。ウクライナとの戦争が始まって3年以上が経過しており、軍需の堅調だけでは民需の不調を支えきれなくなってきたようだ。代表的な問題の1つに、家計の重債務問題がある。家計の銀行からの借入額は、この数年、名目GDP(国内総生産)の15から20%程度のレンジで推移している(図表1)。

借入増のけん引役は住宅ローンだった。2020年に生じたコロナショックを受けて、ロシア政府は経済対策の一環として、住宅の購入を促進するための優遇策を導入した。さらに2022年2月からウクライナと交戦状態となると、ロシア政府は優遇策を一段と強化した。この強化の狙いは、戦争に不満を持つ国民を懐柔することにあったようだ。

後述のように、この間にロシア中銀が利上げに努めた一方、政府が優遇策を強化したため、家計は住宅ローンを組み続けた。しかし住宅価格が高騰したため、政府は2024年7月1日をもって主な優遇策を廃止した。その結果、政策的に低く抑え込まれていた住宅ローン金利は急上昇し、新たに住宅ローンを組む国民は減少することになった。

■急上昇するローンの延滞率

優遇策に基づく住宅ローンの場合、金利は長期にわたって固定されるため、返済のめどが立てやすい。一方で、ロシア国民の多くが消費者ローンも借りている。この消費者ローンは、満期が短いこともあり、金利の変動の影響を受けやすい。その消費者ローンの延滞が2024年末から急激に増えており、ロシア経済の新たな懸念要因となっている。