プロボクシングのWBA世界バンタム級王者のアントニオ・バルガス(28、米国)が7月25日、神奈川県鶴見の横浜光ジムで練習を公開した。30日に横浜BUNTAIで元WBC世界ライトフライ級王者の比嘉大吾(29、志成)を迎え討つ正規王者は比嘉陣営が指摘した弱点をすでに修正していることを明かし、初防衛成功後には、休養王者の堤聖也(29、角海老宝石)との団体内統一戦にターゲットを絞り、その後は、ベルトの統一に乗り出したい考えをぶちあげた。

 「私の打たれ弱さは問題じゃない」

 比嘉陣営から乗り込んだ野木丈司トレーナーの目が気になったのか。公開練習のミット打ちをスタートする直前に2015年のリオ五輪予選時からコンビを組んでいる義父のドエル・モンテス・ヘッドコーチが何やら耳元でつぶやくと、王者のバルガスは、明らかに手を抜いてジャブ、ワンツー、フックなどの基本パンチを繰り出す。そして意識過剰なほど大げさにガードを高く上げていた。1分ほどで切り上げてサンドバッグ打ちを行ったが、そこでも全力を出すことはなかった。
「いい気分。スーパーヒューマンになっているくらいの状態だ。とてもエキサイトしている。初防衛をしっかり果たしてベルトを持ち帰りたい」
コンディション良好を訴えながらも煙幕を張ったのは、それほど比嘉を警戒している裏返しだろう。
野木トレーナーは17日の比嘉の公開練習でバルガスの弱点をこう指摘していた。
「打たれ強くはない。過去大吾以上に強い相手とやっていないのでプレッシャーは感じると思う。そして打ち合いのなかに隙があるんです。ガードが下がる。当然改善してくると思うが、そこの展開の中で狙えるときは狙いたい」
バルガスは昨年12月にウィンストン・ゲレーロ(ニカラグア)を10回TKOで下してWBA世界同級暫定王座を獲得したが、この試合もダウンの応酬で同2月のジョナサン・ロドリゲス(米国)戦でもオーバーハンドフックでダウンを奪われるなど打たれ弱さやガードの甘さが目に付く。そのロドリゲスは那須川天心(帝拳)に何もさせてもらえず3回TKO負けしている。バルガスは2回戦で負けたがリオ五輪に出場しているアマエリート。基礎スキルはあるはずなのだが、牙城を崩すのが難しい絶対王者ではない。
囲み会見で、野木トレーナーの発言を伝えると、バルガスはそれらの弱点を修正してきたことを自慢げに明かした。
「トレーニングキャンプでそういったところの対策をしてきた。過去に犯したミスを払拭するトレーニングだ。自分の動きを見直して隙を埋める対策をした。比嘉のタイミング、オーバーフックも警戒すべき点だ。私はダウンをしても起き上がっているので打たれ弱さは問題じゃない」
バルガスはフロリダ、ラスベガスと2度キャンプを張ってきた。