国内外で活躍する美術家の照屋勇賢さんの個展「魔法童―わらび―と呪文」が南風原町神里の画廊沖縄で開催されている。2人の少年少女「盛賢と静子」の物語を通して沖縄戦と現在、未来をつなぐシリーズ「呪いを解け」など、新作約70点を展示販売している。
「呪いを解け」は、厚紙やアクリル板に紅型を思わせる繊細な文様が彫られた作品だ。伝統的な紅型文様と共に、戦闘機や爆弾などのモチーフが紛れ込む。作品の中央には少年と少女の姿。2人は照屋さんの祖父母だ。
父方の祖父・盛賢さんは幼少期にハブにかまれ片足に。沖縄戦下では妻に背負われて戦場を生き抜いた。母方の祖母・静子さんは沖縄戦で女子学徒隊に動員され、糸満市摩文仁で亡くなった。
「家族から聞いた2人の話から過去に想像力を飛ばした。沖縄戦では4人に1人が亡くなっており、それぞれの家族に”盛賢と静子”がいると思う。彼らの記憶や傷を、生きている人は財産にしていかないといけない。そういう試行錯誤を形にした展覧会だ」と照屋さんは語る。
作品中の盛賢はクレーンでつられたり、片足がなかったり、ロボットや爆弾のような形状になったりと外圧によって姿が変えられてしまう存在だ。その姿は日本やアメリカの間で翻弄(ほんろう)される沖縄の戦中戦後の歴史と重なる。一方で盛賢は常に作品の中心に据えられ存在感を放つ。盛賢を囲む文様は繊細で美しい。
「絵自体が強く、凛(りん)とした存在であることによって、描かれている悲惨な内容を乗り越える力になる。かっこいいもの、魅力的なものを作るということは主導権を握り返す試みでもある。ウチナーンチュにはそのセンスがある。作品の持つ力に期待したい」と照屋さんは語った。
会場には「主導権を握り返す試み」が随所に仕掛けられている。砲弾片が結ばれた風船やゆがんだ「天皇メッセージ」、プラカードを掲げる人々のシルエットが楽しい「Statement of colors」シリーズなど、多様な作品が並んでいる。個展は27日まで開催。入場無料。開館午前11時〜午後5時。