9千人超と女子大では全国最多の学生数を誇る武庫川女子大(兵庫県西宮市)が令和9年度から共学化する方針を明らかにし、波紋が広がっている。少子化で定員割れする私立大が相次ぐ中、定員充足率は約95%と経営状況は良好。突然の発表に学生らからは戸惑いの声も多く、大学側には問い合わせが殺到し、オンラインでの反対署名は5万件を超えた。大学側は「存続を考えた結論」と強調。在籍中の学生が卒業するまでは「実質女子大としての環境を維持する」という。

「強気の共学化」

「武庫女(むこじょ)」の名称で親しまれる同大学は、昭和24年に開学。薬学、建築、経営などの学部を次々と新設し、現在は13学部21学科と全国最大のマンモス女子大となった。

「先を見越した強気の共学化だ」。大学ジャーナリストの石渡嶺司(れいじ)さんはこう指摘し、「女子大を維持し続けると思われていたので、他の大学関係者には相当の衝撃を与えただろう」と話す。

共学化の背景にあるのは大学を取り巻く厳しい現状だ。少子化により大学進学者はやがて減少局面を迎える。日本私立学校振興・共済事業団によると、令和6年春の入学者が定員割れした私立大は59・2%で、過去最高を更新した。女子大に限ると約7割ともいわれ、共学化や募集停止などに踏み切る事例が多発している。

今年4月には京都ノートルダム女子大(京都市)が募集停止を発表したほか、名古屋葵大(名古屋市)、神戸松蔭大(神戸市)も今春に共学化した。「女子大の存在意義がなくなったわけではないが、小規模校を中心に支持を失っている」と石渡さん。都心部や駅に近い立地で、女子生徒のキャリア志向にあった学部が複数ある―といった条件をクリアできないと選ばれにくいという。