タイとカンボジアの国境地帯で24日に起きた武力衝突は25日も続き、双方の死者は2日間で計16人に上った。国際社会から衝突停止を求める声が上がっているが、今後の状況は予断を許さない。

ロイター通信によると、タイ軍は、カンボジア軍が25日未明に重火器や野砲、ロシア製自走多連装ロケット砲BM−21による攻撃を行ったと発表した。

タイ政府は、2日間のタイ側の死者が市民14人を含む15人で、負傷者は46人に上ったと発表した。また、約10万人が避難を余儀なくされた。

カンボジアの地方当局者は25日、カンボジア側で市民1人が死亡、5人が負傷し、1500世帯が避難したとしている。カンボジア政府は、強い殺傷力を持ち非人道的兵器とされるクラスター爆弾をタイ軍が大量に使用したと非難した。

カンボジアメディアによると、同国政府は24日、衝突が起きた国境付近にある世界遺産のヒンズー教寺院遺跡「プレアビヒア」がタイ軍の攻撃により甚大な被害を受けたと非難。武力紛争の際に文化財を保護するハーグ条約に違反すると指摘し、「戦争犯罪に当たる可能性がある」と警告した。

武力衝突を巡り、米国や東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国マレーシアは双方に平和的解決を呼びかけている。タイのプンタン首相代行は25日、衝突が戦争に発展する恐れがあると危機感をあらわにした。(岩田智雄)