フィギュアスケート男子で五輪連覇者の羽生結弦さんが19日、ちょうどプロ3年の節目を迎えた。昨年9月の「能登半島復興支援チャリティー演技会」、30歳の誕生日を迎えた昨年12月7日から今年2月まで完走したアイスストーリー第3弾「Echoes of Life」、3月に宮城での「notte stellata」など、見る者の想像を超えた演技で魅了。孤高の道を走り続ける羽生さんが、その思いを語った。(取材・構成 大和 弘明)

【(3)新ジャンルと掛け合わせて生まれる可能性】

 ――プロ転向した直後は「周囲への期待に応えたい」という強い思いから、「自分が良いと思うもの、良い作品を突き詰めたい」という思いも一層強まっていったと思う。その2つのモチベーションは変化したのか、重なり合ってきたのか。

 「よりグラデーションで交わってきています。質問を聞き、確かにプロ転向した時は凄く期待に応えなきゃと思っていたことを思い出しました。今、もちろんその期待に応えることは大前提に存在しています。それに応えることは、さらに良いものを突き詰めていかなきゃいけないということとイコールに結びついている。自分がやりたい、自分が目指したい、自分が良いと思えるものと、皆さんの期待に応えることが割とイコールで結びついて来られてるのは、アイストーリーという定義ができ始めたことと結びついているのかなと思います。その定義ができ始めたのも、ある意味では自分が作ったものに対して、ファンの方々が良いと思ってもらえるようなものを作れている手応えが若干感じられてきたからこそ、自分が作り出すもの、自分たちが良いと思えるものに対して、ちょっとずつ自信が持てたり、それを今度はどんな形で突き詰めていくのか、とか。どんなものを作り上げていくのかということに対して、より自信を持てていることが強いのかなとは思います」