高齢者医療を支えてきた中規模病院が、次々に破綻している。
コロコロと変わる厚労省の政策に翻弄され、一時は破綻寸前まで追い込まれた病院もある。住民が高齢化した下町の病院長は、この医療制度の過酷な実態を明らかにし、この国の医療と介護をダメにした原因を指摘。日本の医療崩壊を大胆に予測する。
あと5年で行き場のないお年寄りが町にあふれることになる。地獄を回避したいなら、いまが最後のチャンスだ――(熊谷賴佳著『2030―2040年 医療の真実-下町病院長だから見える医療の末路』より一部抜粋・編集。全3回の3回目)。
1973年に始まった入院病床の黒歴史
高齢者向けの入院病床の黒歴史は、1972年に老人福祉法が改正され、1973年から全国的に70歳以上(寝たきりの場合は65歳以上)の老人医療費が無料化されたことから始まる。東京都と秋田県はそれより前の1969年から老人医療費を無料にしていた。
老人医療費の無料化以降、東京の多摩地区や地価の安い都市部の郊外に、長期入院や介護が必要になった高齢者を入院させる老人病院が乱立した。
さすがに、地価が高い東京23区内はそれほどでもなかったが、地価が安いところに老人病院を建てれば利益は大きい。