福岡市博多区の自宅で医療的ケア児の長女(当時7歳)の人工呼吸器を外して殺害したとして、殺人罪に問われた母親(45)の裁判員裁判の公判が15日、福岡地裁(井野憲司裁判長)であった。検察側は「一つの尊い命が奪われた結果は重大」として法定刑の下限にあたる懲役5年を求刑し、弁護側は「大変な努力で必死に(長女の)命をつないできた」として執行猶予付き判決を求めて結審した。判決は18日。

「突如呼吸器を外され、長女は苦しみを感じたはず」と検察側…医療的ケア児殺害の母に懲役5年求刑

福岡地方裁判所

 起訴状などによると、母親は1月5日午後2時45分頃、自宅マンションのベッドで長女の首に挿入された人工呼吸器を取り外して殺害したとしている。

 検察側は論告で、介護の手伝いを頼んだ際の夫の舌打ちや、親族の「このまま大きくなったらどうする」などの配慮に欠けた言動を契機に無理心中を考え始めたと説明。呼吸器のアラームを鳴らないように設定するなど「犯意は強固だった」と主張した。その上で「長女が生きたいと思っていることは被告も感じていた。突如呼吸器を外されて息ができず、苦しみを感じたはずだ」と述べた。

 一方、弁護側は最終弁論で、被告本人は介護疲れを否定しているものの、献身的に介護に取り組んできたことを強調。介護に協力的だった夫からの思いがけない言動をきっかけに、蓋をしていた悲しみが止まらなくなったと主張し、「誰よりも長女を愛していたからこそ、(娘を)ないがしろにするような夫の言動に過剰に反応した。呼吸器を外すだけで失われてしまう命を守り続けた被告に、実刑を科すのはあまりにも酷だ」と訴えた。

 母親は最終意見陳述で「私がどんなに苦しんでも長女は戻ってこない。長女の未来を奪い、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と述べた。