「ずっと忘れないよ その泣き声 その姿 ぼくらに勇気をくれた」

 

 4回目の白血病再発が判明して「余命数か月」と告げられた38歳の男性が今年春、闘病の思いをつづった歌を完成させた。家族への感謝、一日の大切さを歌詞に込めた。1歳9か月の長女が成長したとき、父の存在が力になれば。そんな未来を男性は描いている。

 ♪新しいいのちの始まりの日/ずっと忘れないよ/耳元に届くその泣き声/眠っているその姿/ぼくらに勇気をくれた

 歌を作ったのは東京都の関口裕大さん(38)。長野県で中華料理店を運営していた2021年2月、急性リンパ性白血病と診断された。薬物治療に加え、造血幹細胞や骨髄の計3回の移植を受けた。この間に結婚、23年秋に長女が生まれた。

 年に10歳代後半〜30歳代の約2万人ががんを発症し、就職や子育てと重なり心身の負担が大きい。関口さんも若年での発症に葛藤し、病室の孤独感や治療の副作用のだるさに苦しんだ。

 闘病生活の支えは邦楽だった。「諦めるな」という歌詞に触れ、しっかり治療しようと思った。日常が当たり前ではないと感じた。

白血病「余命数か月」でも闘い続ける父、1歳の娘へ贈る歌「大きくなったとき支えになってくれたら」

娘を抱き、「大きくなったらパパの曲を聴いてほしい」と話す関口さん(6月、東京都世田谷区で)

 朝、無事に目覚められるのがありがたい。妻の「頑張ろう」の一言で恐怖が消えた。生まれたばかりの長女を3回目の移植後に抱き、何倍も強くなれた。この思いを歌詞にしノートに記した。

 今年4月、中枢神経でもがんが見つかり、医師から余命は月単位と告知された。副作用が強い積極的な治療を受けるのはやめた。「家族に何かを残したい」とアプリで曲をつけ、音楽業界で働く友人らに編曲や収録を助けてもらった。スタジオに車いすで入ってマイクに向かった。長女の笑い声も収めた。

 全9曲を「sekimaru presents こtoねくと」の名前でオンライン配信した。「娘が大きくなり、歌が支えになってくれたらうれしい」