大阪府四條畷市は今年度から、市内の民間保育施設で働く保育士らに月4万円の手当を支給する事業を始めた。子育て世代をサポートする市の事業により、近年、30歳代や乳幼児の転入者が増加傾向で、希望する施設に入れない「保留児童」数も増えている。保育士を確保することで解消を進める。(中山亨一)

保育士確保へ四条畷市「月4万円支給」…全職種より100万円低い平均年収、仕事続ける「理由になる」

四條畷市役所

 生駒山系の東側に位置する、同市田原台の「田原台ひまわりこども園」では今月2日、子供らの元気な声であふれていた。ミルクをつくるなど忙しく動き回っていた保育士3年目の女性(22)は、月4万円の増額に「子供が好きで選んだ仕事だが、続ける理由になる」と喜ぶ。

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ミルクをつくる保育士の女性は「やりがいに見合ったお金をもらえてうれしい」(四條畷市で)

 市によると、保育士の平均年収は全職種平均に比べて約100万円低いという。保育士らに支給する4万円は、1万円を勤務先の園が負担し、残りを市が負担する仕組みで、市内の民間12園の園長でつくる「市民間保育園連絡協議会」が市に申し入れて実現した。田原台ひまわりこども園の海老名恵一園長は「業界全体で離職率が高く人手不足の中、大幅な処遇改善をPRできる」と歓迎する。

 「保留児童」は、同市では2023年4月は44人だったが、今年4月は94人と増えた。同市は生駒山系に東部と西部が隔てられ、東部では奈良市方面に通勤する住民も多い。西部の園に子供を通わせることは現実的ではないなど、希望する園への入園を待つ保護者が多いためとみられる。

 離職防止と新規採用による保育士の確保は喫緊の課題で、月4万円を手当として支給するため、市は今年度一般会計当初予算に7200万円を計上、約200人分の手当費用を確保した。3年間継続し効果を検証するという。市こども政策課は「月4万円は府内でも珍しい大幅な処遇改善。待機・保留児童の解消のために保育士を確保したい」と期待を寄せる。

 

 大阪府東端にある四條畷市は生駒山系のふもとにあり、人口約5万3000人は今年6月時点で府内の市で2番目に少ない。一方、JRで大阪市内まで約30分と利便性も高い。

 保留児童数が増える背景には近年の子育て世代の転入超過(入超)も影響している。2023年度までの5年間に30〜34歳は各年度7〜82人の入超となった。0〜4歳児も15〜58人の入超という。

 子育て世代のサポートにも取り組んでいる。第2子以降の給食費や保育料の無償化といった経費関連の施策のほか、中古住宅のリフォーム補助金など市内居住のための支援、育児に関する相談窓口設置や絵本の貸し出しといったサービスなど16事業を展開している。

 市こども政策課は「子育て施策に加えて、自然が多く、都心部に出やすい生活環境のよさが選ばれる理由になっているのでは」と話す。