欧州連合(EU)が、絶滅の恐れがある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約で全19種のウナギの国際取引を規制するよう提案した。11〜12月に開かれる国際会議で提案が通れば、お手頃価格で楽しめた輸入ウナギの流通が滞る可能性がある。ウナギはますます庶民の手から離れていってしまうのか――。(渡辺星太)
価格転嫁も
「ちょっと
今月18日の昼時、東京都港区の大手チェーン「鰻の成瀬」の泉岳寺店。江東区の会社員男性(35)が笑顔でうな重をかき込んだ。この日の都心の最高気温は30度を超え、店内はスタミナをつけて暑さを乗り切ろうとする客で満席だった。
店で提供するうな重は1600円から。アジアで養殖されたニホンウナギやアメリカウナギをかば焼きにしてから輸入することで低価格を実現している。2022年の開業から急成長を遂げ、店舗数は約400店にまで増えた。
だが、店舗を展開する「フランチャイズビジネスインキュベーション」(滋賀県)の山本昌弘社長(42)は表情を曇らせる。「米価が上がっても耐えて価格を据え置いてきたが、今度ばかりは価格転嫁せざるを得なくなるかもしれない」
7割が輸入
頭痛のタネは、EUが先月、同条約の事務局に行った提案だ。国際自然保護連合の絶滅危惧種リストで最高ランクに分類され、すでに国際取引が規制されているヨーロッパウナギだけでなく、日本国内で広く食べられているニホンウナギなどを含む残り18種についても取引規制を求めた。