金沢大古代文明・文化資源学研究所が主催するフォーラムが26日、金沢市尾山町の県文教会館であった。副所長の足立拓朗教授が昨年の能登半島地震と能登豪雨で被災した文化財の3次元測量について発表した。

 足立教授は、能登地方で被災した文化財の調査やレスキューに学生らと取り組む。昨年度は文化庁の助成で、輪島市門前町の総持寺祖院など約18件をスキャナーを使って3次元(3D)で測量した。測量結果を基に作った3Dモデルは、さまざまな角度から分析できる利点があると説明した。

 本年度は新たに約15件を測量する予定と明かし、「仮想現実(VR)を利用して、皆さんが映像に入ったような形で、360度見られるものをつくりたい」と語った。

 被災した文化財には、修復に補助金が出ない未指定のものなど、復旧が困難な場合があると指摘。実物が失われても「3次元測量の記録があれば、復興に活用できるかもしれない」とし、VRや実際の光景に3Dモデルなどを重ねて表示する拡張現実(AR)を使った「復元」の可能性を示した。

 フォーラムでは、金沢大の研究者が「弥生時代の木材からみた植物利用」「メソポタミア文明の源流をたどる」などをテーマに報告し、約80人が耳を傾けた。(谷口大河)