ドイツ在住で日本を代表するリート(歌曲)歌手、メゾソプラノ/ソプラノの白井光子(78)が、8年ぶりに日本で「ドイツ・リートの夕べ」を行う。また、セイジ・オザワ松本フェスティバルでは「リートデュオ」の勉強会を開く。白井は「ドイツの聴衆は自由に反応します。日本の聴衆はおとなしい、もっとリアクションをしてもいいのです。気楽にいらしてください。ただ聴いてくだされば、いろいろなことが分かってきます。そして音楽を分かちあえると思います」と話した。
比類なき表現力
白井は1947年、長野県生まれ。武蔵野音楽大を経てシュトゥットガルト音楽大で学んだ。73年、フーゴ・ヴォルフ歌曲コンクール、74年、ロベルト・シューマン・コンクールを始め数多くのコンクールで優勝し、国際的なリート歌手として活躍。82年、シューマンの生地ツヴィッカウ市よりシューマン賞を受賞した。各国で「比類なき表現力豊かな声」「高い知性を備えた歌手」「リート歌手のファーストレディー」などと絶賛されてきた。
72年からピアニストのハルトムート・ヘルとデュオを組み、「リートデュオ」の活動を精力的に続け、94年、カールスルーエ音楽大にリートデュオ科を設立した。
教授を務める白井は、今も6人の学生を教えている。「学校からは、いられるだけいていいと言われているんですけど、そうはいってもね。ドイツも暑いのに校舎にクーラーが入っていないんです」と笑う。
「インプロヴィゼーション(即興)」という授業がある。学生に即興で演技をさせるが、言葉は使わない。例えばガラスの板を運ぶ演技。どんな大きさのガラスなのか、どれぐらいの距離なのか、乱暴に運んだら割れてしまう。またモデルになってシフォンの洋服を着ていることを想像させる。シフォンは軽い素材だから足にからまるかもしれない。自分でイメージしなければいけない。